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石井清四郎と特撮映画 長男:石井良インタビュー

1963年青島要塞爆撃命令撮影現場にて
1963年青島要塞爆撃命令撮影現場にて 
当時はまだ小さかったということもあり、あまり記憶にはないとのことですが、清四郎から直接聞いたというエピソードや、実際に見た模型のことなどを清四郎の長男、良から話を聞きました。

2015年1月4日 聞き手:管理人(孫)

石井清四郎と特撮映画の関わり

 

最初に石井清四郎が特撮映画と関わった作品は何ですか?

 

良:1942年の「南海の花束」に九七式大型飛行艇の旅客機型を石井製作所が提供したのが最初だと思います。続いて「ハワイ・マレー沖海戦」にホイラー飛行場に並ぶ単発機のミニチュアを提供した様です。写真も残されています。なお、「ハワイ・マレー沖海戦」では光学合成も担当したと本人から聞きました。

 

円谷英二さんとの関係は模型飛行機から始まったのでしょうか。また、川上景司さんとは親しかったとのことですが、特撮映画に関わるきっかけは川上さんの存在が大きかったのでしょうか。

 

良:川上景司氏との関係の始まりは全く不明です。

むしろ、飛行機模型を作っていた事から、飛行機好きで有名な円谷英二氏の目に留まり、「南海の花束」の九七式大艇の旅客機型の注文を受け、それが好評だったため「ハワイ・マレー沖」にもミニチュアを提供して、さらに光学合成まで手掛けることになったと考えたほうが自然な気がします。その中で川上氏と知り合い親交を深めたのではないかと思います。

 

「青島要塞爆撃命令」の撮影現場の思い出は?撮影現場にはよく行っていた?

 

良:「青島要塞爆撃命令」ではドイツ軍の弾薬輸送列車の機関車を作りました。ガソリンエンジンを積み自走出来るのです。御殿場の自衛隊の演習場にオープンセットを組みラジコンで走るのです。ヘリコプターも使い空撮もしてました。撮影現場の見学に行った写真は残っています。印象的だったのは皆で雑魚寝をしたことですね。

その他の撮影現場についてはあまり覚えていることはありません。インド映画の顔合わせに付いて行ったのが最後位でしょうか。

そういえば円谷プロで子役さんの代わりに、ロケットのようなものにまたがったことは覚えています。

 

円谷英二氏や川上景司氏について、印象に残っているエピソードはありますか?

 

良:円谷英二氏のエピソードとしては、「青島要塞爆撃命令」のロケ地で父に紹介され、誕生日が同じ7月7日だと聞きました。(前記事にあり)とてもにこやかなオジサンだな、と思いました。私が10歳の時の話です。

そういえば川上景司氏が「サンダーバード」(劇場版)の公開時に、観て来てから家に来て、ゼロ-X号の組み立てシーンが良かったと父に話していたのを覚えています。私も観たばかりだったので内容を理解できました。

 

清四郎本人から直接聞いた作品についてのエピソードを教えてください。

 

良:「世界大戦争」では、ウエハースでモスクワなどのミニチュアセットを作って圧搾空気ボンベをズラリと並べ一気にエアでセットを吹き飛ばす事にしたそうですが、ウエハースなのでネズミに食べられて対策が大変だったそうです。

 

「海底軍艦」ではアメリカ海軍の原子力潜水艦を作ったそうです。現在のDVDでは見ることは出来ませんが、公開時には確かに見た記憶があります。ムーの潜水艦を追って深く潜りすぎ水圧で圧潰するのです。多分船体中央部を鉛で水密に作り水を入れ排水ポンプで水を吸出し圧潰させたのだと思います。倉方さんは轟天号のドリル部分を作ったそうですね。最初別の所で作ったそうですが上手く回転しないので、倉方さんが作り直したそうです。

 

「ゴジラ」では放射能でグニャリと溶かされる高圧鉄塔をアルミニウムで作り、バーナーで炙り溶かしたと聞きました。これは、ゴジラが画面中央を左に向かい歩いている場面で、画面の左上で鉄塔がグニャリと溶け崩れる所が映っています。これがそうだと思います。

 

TOKYO MXで再放送され話題の「ウルトラQ」ですが、本人から聞いていることはありますか?

 

良:「ウルトラQ」では、装演、美術として仕事をしたそうですが、あまり話を聞いていません。ただ、「マンモスフラワー」の巨大植物ジュランが溶けていくシーンはシンナーを振り掛けて溶かしたと聞いています。

「8/1計画」では、由利子が箱に入れられて川を流れて行くシーンが石井清四郎による装演だと分かります。縦長の箱は水の上では横倒しになってしまうものです。しかしこの箱は縦のまま由利子が揉みくちゃにされている様に流れています。これは釣竿で2本のピアノ線で箱を吊るして、さもそれらしい動きをさせているのでしょうね。

 

現存する模型作品、印象に残る模型とは

「太平洋ひとりぼっち」のマーメイド号、「妖星ゴラス」のブルドーザーや「青島要塞爆撃命令」の機関車は今も残っているそうですね。

 

良:最近中型のマーメイド号が現存し、展示されていたことを知って驚きました。※2014年銀座山野楽器にて開催、石原裕次郎博

「太平洋ひとりぼっち」では、マーメイド号のミニチュアを2~3隻作りました。

(というのも写真をよく見ると、大中サイズ以外にもさらに小さいマーメイド号を製作したように見えます。)

一番大きいサイズのマーメイド号も骨組みからしっかりと作られています。おそらく全長4メートルはあると思います。かなりの大きさがありますね。これにまたがっている子供の頃の写真も残っています。

 「妖星ゴラス」などでは建設機械を作りました。「妖星ゴラス」のブルドーザー、「青島要塞爆撃命令」の蒸気機関車は特撮博物館に展示されたそうですね。機会があれば見てみたいです。

 

石井清四郎の得意分野はやはり飛行機や船だと思いますが、中でも印象に残っている模型はありますか?

 

良:何の作品用かは不明ですが、印象に残るミニチュアはリンドバーグのスピリット・オブ・セントルイス号という飛行機のモデルです。驚いたのは布張りで凹凸が目立つはずの胴体を、ツルツルの木製で作っていた事です。

昔の飛行機は木や金属で作りましたが、その機体の外側は翼も胴体も布張りでした。そのため、構造材に接着してある部分は少し高くなり、構造材の間の部分は凹んだ形になってしまいます。その凸凹はツルツルの木製部分に後から鉛筆で書き込むのだそうです。その方がカメラで撮影した時本物らしく見えると説明を受けた事です。

 

その模型は何歳頃見たのですか?どの位の大きさか記憶にありますか?

 

良:多分中学生の頃ではないかと思いますが自信はありません。ミニチュアの大きさは全長で45センチ位だと思います。

 

最後に、清四郎は大阪万博で三菱パビリオンに3ヶ月間関わったそうですが、その内容については何か聞いていますか?

 

良:大阪万博の内容については全く分かっていません。大阪に居るという事しか知りませんでした。

 

 

質問は以上です。ありがとうございました。